外資が変える日本的経営
Conflict and Change
Foreign Ownership and the Japanese Firm
by George Olcott
日本経済新聞出版社 2010/7
UBSアセットマネジメント社長からケンブリッジ大学経営大学院シニア・フェローに転じた著者による日本企業論。、日産自動車、中外製薬、新生銀行、匿名の2社を観察することで、外資による買収の経営えの影響を観察しています。
題名に反して、結論としては、奇しくも私のPCの誤変換「外資が帰る日本的経営」となっています。すなわち、日本企業はなかなか変わらないというものです。
やはり、焦点は人事。
新生銀行が誕生した時、人事部のすべての権限が各部門に分散化され、その結果、いくつかの意図せざる結果がもたらされた。従業員の採用、研修、報酬が部門ごとにバラバラとなったのである。それは一見良いことのようにみえたが現実には不公平感が強くなった。p.218
トップダウンとボトムアップの相違にも焦点があたる。面白いのが、日本人従業員がCEOに言及する回数というデータp.226
- 日産 64
- 中外 20
- 新生 16
- F1 4
- F2 7
責任を曖昧にしておく日本式の意思決定が、各社でどのように権限が明確化されたのかを表しています。
日本企業買収の難しさは、日産のムロンゲ氏のコメントに集約されています。
「日本では1を達成したとみとめられるためには3を達成しなければならない」とカルロス・ゴーンは言っていた。(中略)ルノーの経営参加による最初の数年の成功でさえも、それは日産のような大企業が再生したという意味で日本にとって良いニュースであったとしても、日本人は依然として我々を信頼していない。日本のメディアも商圏アナリストも、トヨタ、ホンダなどの日本企業に対するよりも日産に遥かに多くを要求するわけである。p.224
他の本にないユニークだったのが、ジェンダーの分析。
男女両方の従業員の間での変化の認識は、調査企業において予想されるほど強くなく、今回の調査項目の中では最低であった。このことは、再度、株主が変わるだけでは深く埋め込まれたジェンダーに対する姿勢を変えるには十分でないことを示唆している。p.180
19年前に入行したとき、総合職の女性が制服を着ることに違和感を持っていた。そんな職場が外資になり、制服が廃止され、能力のある女性が活躍しているように思っていただけに、この結論は意外でした。
外科手術だった新生。漢方薬だった中外。その中間だった日産。やはりクロスボーダーのPMIには、家族類型が役立つと思いました。
- 中外:直系家族同士
同じ家族類型なので、経営スタイルに変化なし。 - 新生:絶対核家族→直系家族
対局にあるため、摩擦も最大。絶対核家族側が買収側だっため、絶対核家族のルールが貫徹される。直系家族側は、新しいお父さんに戸惑いながらも付いて行くが、文化の違いを乗り越えられず - 日産:平等核家族→直系家族
あくまでベースは核家族だが、複数の家族類型を束ねてきたフランスの伝統をフルに活かしてて、直系家族との並立に成功。
ビジネスの分析だけでなく、文化の分析が重要ですね。
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