セゾンとスルガ

 クレディセゾンがスルガ銀行に出資するのだそうです。

クレディセゾンの賭け 脱カード会社へスルガ銀行に出資 編集委員 鈴木哲也 - 日本経済新聞
クレジットカード大手のクレディセゾンが経営再建中のスルガ銀行に出資し、持ち分法適用会社にする方針を固めた。旧セゾングループの店舗を足場にして成長した「流通系カード」会社から急いで転換しないと衰退するとの危機感が背中を押す。消費行動や決済手段...

先日の株主コストとROEのチャートで見てみましょう。

資料: Forbes Global 2000 他。 株主資本コストは、Gurufocus.com より。バブルサイズは、時価総額

 元銀行員的には、銀行がクレジットカード会社を持つイメージですが、本件は逆ですね。株主資本コストが6.4%のセゾンが、同5.4%のスルガ銀行に15%出資して持分法適用会社にする。ROE(時価総額ベース)は、セゾンが17.1%とスルガの8.8%を大きく上回っています。本件の鍵は、セゾンがこの取引を通じて株主コストを下げ、スルガがROEをセゾンなみに改善することだと理解しました。

 似たようなケースが他にあるかなと思ったのですが、思いつかなかったので、バークシャー・ハサウェイを見てみましょう。同社の株主資本コストは、9.2%。このコストで調達した資金をウェルズ・ファーゴから引き上げて、アップル(同11.9%)、バンク・オブ・アメリカ(同10.5%)、アメックス(10.6%)に投資しています。自分のコストよりも高いリターンが期待できる3社に投資していると言えるでしょう。

 その結果であるROEは、アップルが3.8%、BOAが10.2%、Amexが5.8%と、いずれも株主資本コストを下回っています。株価が高すぎだからでしょうけど、バークシャーにとってみれば、株高は悪くありません。同社のROEは12.1%と、株主資本コストを上回っています。

 アップルは、最近、金融・決済事業に注力しています。事業相手に、大株主参加にあるアメックスではなく、ゴールドマンを選んだのは、興味深いところです。

 ソニーは金融子会社を再上場させるようですね。

ソニーグループ、金融子会社の分離検討 株式公開前提に - 日本経済新聞
ソニーグループは18日、金融子会社のソニーフィナンシャルグループを分離・独立させる方針を発表した。ソニーは2020年9月にソニーフィナンシャルを約4000億円を投じて完全子会社化したばかりだった。ソニーフィナンシャルの新規株式公開(IPO)...

 分離後のソニーの株主資本コストは10%を超えるのではないでしょうか。ROEが10%以上になるような商品・サービスの開発をするということなのでしょう。

 この図を見ていると、日本の銀行が心もとないですね。超低金利で株主資本コストが低く、PBRも低いのでROEはなぜか高くなっている現状。金融が正常化した後に、このジャングルで生き残れるのか心もとないです。

では。