芸能事務所と家族類型

今週は、選挙なのに、芸能ニュースの週でしたね。ジャニーズと吉本を観ていて、思ったことを書いてみます。

海外で経営コンサルをやっていると、日本式の組織がなぜ機能しないのかという問いを何度も発します。私のたどりついた答えは、家族類型でした。直系家族的な国ならまだしも、違う家族類型の国では、調整が必要というものです。

吉本は、久々に見た直系家族的な組織でした。会社が親で社員が子供。先輩を兄さん、姉さんと呼ぶ。先輩は後輩を「うちの子ら」と呼ぶ。売れている先輩が、後輩に食べ物をふるまう文化。かつて、暴力団と自民党の組織が似ていると言われましたが、究極的には陸軍にその特徴が集約されます。

一方、ジャニーズ事務所は、対照的でした。社長はタレントをYouと呼ぶ。威圧的ではなく、「やっちゃいなよ」という文化。タレント同士は「君」づけ。先輩後輩は明確に認識。よくこれで、あれほどの高額所得者をまとめられているなと興味があります。

これは、絶対核家族な文化です。アメリカで生まれた日本人として、喜多川元社長の強烈なこだわりでできたものだと思います。

ほとんどの日本企業も、吉本と同じ直系家族的な組織です。しかし、世の中的には、フランスのような平等核家族が正しいとされているため、社長と新人社員も同じ人間で、社員もひとりひとり個人として大切にされているという前提で、制度は整備されていきます。そこに現場とのギャップが出てきます。日本人の部長が、オランダ現法社長とし赴任すると、どうしても、直系家族的なホンネが出てきてしまいます。

そもそもの価値観の違いを学び、自分にどういう傾向があるのか認識した上で、現地の人事施策に望むのがとても大切です。

ジャニーズ(従業員数130名)のような経営は例外的だと思いますが、それでも、100人の壁を感じます。カリスマなき跡、この企業文化で組織が力を発揮できるのか。

一方、吉本(従業員数600名)が、ここまで大きな組織を維持できているのは、日本人に合った企業文化であることも一因でしょう。テレビが大型になり、ひな壇芸人が重宝される時代、団体芸を得意とする事務所の企業文化としては、悪くありませんでした。

スクリーンが、手のひらサイズになり、個人芸の時代に移った時に、吉本の企業文化がマイナスにならないか。海外展開の障害にならないか、引き続き見続けていきたいと思います。