人間は、自分が生まれ育った家族の価値観に影響される。社会はそうした人が構成するため、どのような家族類型が多いかは、社会の価値観に影響します。
直系家族は、家族類型のひとつです。親が子供より、長男が他の兄弟より権威を持ちます。
直系家族と言われる国は、日本、韓国、台湾、ドイツ、スウェーデン、スイス、イスラエルなど。親方から弟子に技術が受け継がれるため、高級品の生産が得意です。また、先輩を敬う文化なので、政権交代が起こりにくくなります。親子という身内を優先しますので、外国人の受け入れも苦手です。
「直系家族の罠」は私の造語です。直系家族な組織の平均年齢が35歳を超えると、その組織は活力を失い、衰退から抜け出せなくことを指しています。
ここで重要なのは、活力が落ちる理由はトップの判断ミスではないことです。むしろ、失敗しないが故に停滞するのです。直系家族は年功序列ですので、組織の平均年齢が35歳を超えるとなれば、トップは60歳を超えます。十分な経験のあるトップは、ギャンブルをしません。先輩を批判しづらい文化で、失敗しないわけですから、トップを辞めさせる理由がみつかりません。無難な判断をする人の長期政権になれば、画期的なアイディア、新商品、新政策を実施する人が権限を持たなくなります。イノベーションが起こらなくなり、他国の競合に一気に抜かれる。
経営者が失敗しないのは、個社では良いことですが、産業全体でみれば、無茶する企業がなくなり、技術革新が失われ、最終的には利益率が下がります。
罠というのは、悪い状況になるという意味と、そこから抜け出せなくなる意味が込められています。