羽田空港での事故の記事を読みました。
亡くなられた方のご冥福をお祈りします。同じ事故をNYTも記事にしていました。
事故が起きたのは、2024年1月2日午後5:50ごろ。毎日1月3日の朝刊の締切に間に合うように記事にしたのだと思います。NYTはまだ、インターナショナル版の1月2日号には掲載されていませんでした。
Updated Jan. 3, 2024, 12:36 a.m. ET
とあるので、NYTの方が、長く取材ができていますが、夜の取材は限られるので、同じような締め切りと考えてもよいのではないでしょうか。海外のメディアを読む意味のわかる良い例だと思うので、コメントします。
毎日は、さすがのネットワークで、国内に張りめぐらされた記者からの報告をまとめています。国交省、海上保安庁、警視庁、羽田空港などに取材。犠牲者の氏名まで掲載しています。署名のある記者は6人。社会面では乗客へのインタビューも掲載。事故原因のコメントと、「正月から大惨事」という感情が揺さぶられるコメントが掲載されていました。降機については、こんなコメントがありました。
ここまでひどいとは思わなかった。着陸して降りるまではみんな冷静だった。機体から降りて10分15分くらいしてから火が吹き上がった感じ。ニュースで聞いて驚いている。
一方、NYTは、日本航空の乗務員の対応の素晴らしさに焦点を当てた記事になっています。署名のある記者は4名。
まず、スウェーデンのAftonbladet紙の記事を引用。
He told the newspaper that his family did not understand exactly what was happening or the announcements, which he said were in Japanese.
His father, Jonas, told the newspaper, “The entire cabin was filled with smoke within a few minutes,” adding: “We threw ourselves down on the floor. Then the emergency doors were opened, and we threw ourselves at them.”
“The smoke in the cabin stung like hell,” Anton told Aftonbladet. He said that once they got out of the plane, he and his family had run out “onto the field.”
“It was chaotic,” he added.
“We are all completely in shock,” he said. “I don’t think we understood what had happened.”
航空機の安全というのは、日本だけの問題ではなく、世界中で役立つものです。米国の新聞であるにもかかわらず、スウェーデン人一家の体験を引用しています。元の記事は、スウェーデン語ですね。日本語のわからなに外国人旅行客にとって、日本での航空機事故がどれほど恐ろしかった伝わってきます。
記事では、避難の際、機内のアナウンスシステムが故障したため、乗務員がメガホンと声を使ったとも記されてます。JALの国内便にNon-JapaneseのCAが乗務していたかはわかりませんが、日本語のわからない乗客も、無事に脱出させたと思うと、その優秀さが伝わって来るのです。
毎日は、国交省OBに原因を聞いていますが、NYTは、グリニッジ大学の教授から「a miraculous job」というコメントを得ています。
When the plane came to a stop, the nose gear collapsed, pitching the aircraft nose down with its tail up. Mr. Galea said in an interview that the footage showed passengers were evacuated from two of the exits at the front of the plane, and one exit at the back. Some of the “passengers essentially had to climb a hill in smoke,” he said. “A cabin crew stood at the back waving a torch, urging them to come forward.”
ノーズギアが壊れて、機尾が持ち上がり、丘のような傾斜になっていたというのは、重要な指摘ですね。煙の中、傾斜を登って脱出するのは、容易ではなかったはずです。
航空機の安全カードを作る会社の社長にも取材していますね。
As part of safety testing of new airplanes, airlines must demonstrate that all passengers can be evacuated in 90 seconds. In the 1970s and 1980s, emergency training was mainly focused on the crew, Ms. Ferguson said, but in the 1990s and 2000s, new emphasis was placed on educating passengers how to react in emergencies.
1970年代は乗務員の訓練に重点があったが、1990年以降は乗客の啓蒙に重点が移ったというのも、重要な指摘です。
よく読むと、NYTは事故原因については、ほとんど語っていないですね。関係者のコメントはそのまま引用していますが、読者がミスリードしてしまうことを巧みに避けていると思いました。
航空機事故に対する分析と対策は、あらゆる産業を通じて模範となるものです。失敗の科学にも書いてありましたが、生贄を探すのではなく、冷静な自己分析が重要なのだと思います。
では。