2020年度末の時価総額をいろいろ調べていたら、XERO(1.7兆円)のがNEC(1.2兆円)を越えていました。日本のメディアは、テスラがトヨタを上回った時同様、それって株でしょ?とあまり深く取り上げないかもしれません。しかし、実際にXeroを使っている身としては、思うことがいくつかあります。
ノークリサーチの調査によれば、中堅中小企業向けの会計ソフトでNECは6位、シェアは5.9%。
日本の多くの人にとって、NECは大会社で、コンピュータのソフトも作っているという印象でしょう。Xeroはほとんど知らないでしょう。
両社の比較表を見ると、Xeroの業歴は14年。100年企業の日本電気とは格が違います。NECの売上高は3兆円。社員も11万人。Xeroとは比較になりません。
なぜ、こんなに格が違う会社の時価総額が逆転するのか。そのひとつの理由が、「私でも使えるから」だと思います。
私は、Xeroをシンガポールで働いていた頃に使い始めました。
- 個人事業主でも使える価格設定(毎月30USD)
- Xero仕様で届く請求書は、ワンクリックでシステムに反映
- オンラインバンクに接続しているので、入金の消込は確認作業だけ。
- 会計士にもアカウント渡してあるので、いつでも相談できる
- 損益計算書等のレポートは、自由自在
と、それまでの、「記帳は会計士に全部おまかせ」の時代が終わってしまいました。
オランダに移った時も、€建ての別組織を作って、オランダの会計士にアカウントを共有するだけ。Xeroをそのまま使い続けることで、VATや所得税の支払いもできています。
これの素晴らしさは、海外で事業をやったことのある人なら、すぐにわかるでしょう。SAPを全世界で展開できるような一部の大企業を除けば、ほとんどの日本企業は、日本と海外で別の経理ソフトを使っています。上場企業であっても、海外子会社から送られてくるExcelをつなげて連結するなんてザラでしょう。
たとえば、ラーメン店をアメリカ、ニュージーランド、オーストラリア、シンガポール、マレーシア、インド、UAE、イギリスに展開しようという個人事業主は、Xeroで会計を完結できるでしょう。前にも書きましたが、英国連邦の会計士は相互承認制度があり、会計ルールも似ているのです。オンラインバンキングと経理ソフトをつなぐには、NTTデータのなんとかというソフトを使ってくださいとかいう国とは雲泥の差がついてしまいました。
日本のエンジニアが、日本企業のしきたりにしたがって、上述の国で共通で使える経理ソフトを作ったら、いったいくらかかるでしょう。運用まで含めたら数千万で収まるかどうか…。膨大な記帳の人件費も劇的に下がりました。なにせ、Xeroのアカウントをもう一つ作って、人件費の最も安い国にあるアウトソーサーに頼めばいいのですから。
この「世界の会計産業を変えるインパクト」が、時価総額に反映されているのだと思います。
では。