イオンとコダック

イオンモールが閉鎖になる日が来るとしたら、どんなときかを考えてみました。下図は、世界の小売企業を売上高、ROA、時価総額でプロットしたものです。

 この図を見ていると、小売が歴史的な転換点を迎えているのがわかります。既存型のスーパーのウォルマートが、Amazonに売上で抜かれるのも時間の問題になりました。

Amazon Will Outgrow Walmart 3-to-1 Over Next Five Years | PYMNTS.com
New research by PYMNTS shows that the long, steady revenue uptrend Amazon has posted over the past decade is set to cont...

 若い世代は、スーパーに行くか、スマホで買うか、毎日、投票をしており、その結果で政権交代が起こるのだと思います。

 ただ、ウォルマートはさすがで、世界最大の購買力を生かして、総資産利益率を5.6%にまで高めています。

 ターゲットはさらに資産に頼る経営を止め、ROAを高める戦略に転じているように思えます。

Target ROA 2010-2024 | TGT
Current and historical return on assets (ROA) values for Target (TGT) over the last 10 years. Return on assets can be de...

ウォルグリーンは、ウォルマートと正面衝突は避け、歩いていける店に徹しているのでしょう。7&i も同じ戦略でROAを確保しています。

オランダのAD(Ahold Delhaize)は、安売りを諦めたように感じます。ビーガンや植物性ミルクなどに注力し、付加価値を高めることで、5.2%のROAを実現しています。

イオンのROA:1.5% は、持続可能でしょうか。地元の零細商店を「養分」として成長してきたにしては低過ぎはしないでしょうか。

 ロンドンのAmazonフレッシュで買い物をした時の一番の驚きは、「嫌悪感がなかった」ことでした。棚の商品を手に取るとカートに入るということは、ずっと監視カメラにモニターされているようなものです。これまでのプライバシー基準でいえば、監視されてまで買い物したいとは思わなかったでしょう。

 しかし、レジで人にも合わず、ゲートを出ると、私のアマゾンアカウントから金額が落ちていました。すなおに便利だと思えたのです。

 人工知能の発達速度からすれば、店舗でも、「オススメ」をしてくるのは時間の問題でしょう。缶コーヒーが特売です、新しいビールが入りました、おむつはまだありますか?とか。メタバースでも同じ体験ができることになるでしょう。

 アップルが写真をフィルムからインスタに変えてしまったように、アマゾンは買い物を変えているのです。その原動力は研究開発費(R&D)です。アマゾンのR&Dは2021年度561億ドルに達しました。

  イオンの2021年度の売上高は、8.71兆円。去年の為替レート(112円)では777億ドルなのですが、1 USD = 140JPY で割ると、 622億ドルです。自社の売上の9割に相当する金額をR&Dにつぎ込むテクノロジー企業とどう競争すべきなのでしょうか。iPhone 登場をボーっと?見ていたコダックのようなものかもしれません。

 イオンのある市役所は、Xデーもありうる前提で、長期計画を立てるべきかもしれません。

では。