日医工が事業再生ADRを申請しました。記事では、、国の承認外の製造を行ったとして、約1カ月の業務停止命令を受けたことが原因としています。
下図は、2016年に米国Sagent社を買収する前の損益分岐点図です。
固定費は3ヶ月で10億円。限界費用は61.3%なので、損益分岐点は258億円。売上高は400億円に迫っていましたから、安定して利益を上げていました。
それよりも注目なのは、この回帰分析の決定係数(R2)が0.9439と高いこと。変動費をきっちり管理する手堅い会社だったのがわかります。
同じ分析をSagent買収後、コロナ(2020)&業務停止(2021)前ですると下図の通り。
固定費がマイナスになってしまい、変動費率が1以上になっていました。売上を100円増やすために、変動費が100円以上増えるということで、なにか問題があったのではないでしょうか。
決算書を詳細に見る時間はないのですが、日本企業の抱える問題の典型があるように思えます。日本の労働人口が減少し始めて回復の目処が立たない以上、売上を増やすには海外に出る必要があります。同社がクロスボーダーM&Aをしたのは、その意味で当然の判断だったと思います。
しかし、日本企業(特に地方企業)は、海外企業を一体として経営する人材が欠けています。アメリカでいえば、「ニューヨークの企業はクロスボーダーM&Aがうまいが、ミネソタの企業は全然ダメ」なんてことはあまり聞きません。
今の日本で、医療費抑制は最重要課題のひとつです。後発薬最大手が、アメリカ企業買って6年で潰れて良いわけがありません。ちょうど、人材版伊藤レポート2.0が出ましたが、書かれていることを日医工がそのまま実施できたとは思えません。こういう地方企業が、どんどん外に出ていけるような人材育成が重要なのではないでしょうか。
【追記】
こちらの記事によると、米国以外にも買収を繰り返しており、そちらの影響もあったようです。
https://biz-journal.jp/2022/05/post_295788_3.html