日本経済の構造変化

 ドル円は日米金利差というよりも、米国政府の意向で決まってきた歴史をみてきました。最近、米国政府の要求が厳しくなくなったのは、米国の貿易赤字に占める日本の割合が下がったからでした。では、このまま、円安が定着するのでしょうか。

 日本の経済構造の変化をみるために、横軸に経常収支のGDP比。縦軸に対外純資産のGDP比を取ってみました。

 発展途上国は、経常収支は赤字。対外純資産も債務超過(債務国)です。この赤字+債務国の象限を「冬」としてみました。

 低賃金を生かして輸出を伸ばすと、経常収支が黒字になります。黒字+債務国を「春」としました。

 経常黒字が続くと、やがて、債権国になります。これを「

 さらに、高賃金で輸出競争力を失うと、経常赤字に転落。これを「

 日本は、1980年、石油ショックで経常収支が赤字になりました。対外純資産はわずかに黒字でした(「秋」)。

 80年代は、貿易黒字が拡大、経常収支も黒字が定着しました。90年代にかけては円高対応もあって、アジアを中心に海外直接投資を増やしたため、対外純資産も増えていきます(「夏」)。

 人件費が上がったので、競争力は低下。2012-2014年は貿易赤字になりますが、所得収支が大きくなったので、経常収支は黒字を維持しています。

 2022/1-6の経常収支は、8年ぶりの低水準でした。GDPの1.5%相当と考え、2021年の対外純資産を仮で入れてみると2022年はだいぶ秋に向かっているのがわかります。24年前とは比較にならないほど対外資産を積み上げており、日本企業は海外で稼ぐ力をつけました。1980年とは為替の影響が全く異なるのだと思います。

同じ図をアメリカで作ってみました。ずっと冬ですね。基軸通貨国と日本は違うのかもしれませんが、この10年の対外債務の積み上がりは驚異的でした。国外の投資も増えているのですが、それ以上に直接投資や、証券投資の受け入れが伸びました。まるで、発展途上国のように、外資を呼び込んで国を発展させてますね。

 アメリカと比べると、日本の投資受け入れが、あまりに少ないのがよくわかります。円を売って、日本国外ばかりに投資していたら円安になりますね。日本が外国の投資家からみて魅力的になり、日本への投資が増えたときが、本当の円高反転なのだと思います。

では。