欧州に住んで9ヶ月が経ちました。ひとくちに欧州といっても、様々な顔があることがわかりました。家族類型の理解も深まりました。欧州に赴任する際には、家族類型の4パターンを頭に入れて、人事制度を間違わないようにしたいものです。
たとえば、絶対核家族地域である、アメリカ、イギリスに住んだことのある方は、真逆の価値観であるロシア・東欧に赴任した時に、戸惑うと思います。英語の通じる白人と話しているのに、反応が真逆だからです。共同体家族地域の人は、権威を受け入れ、分配の平等さに価値を認めます。ま、だから中央政府の計画経済に従い、コルホーズとかやってみようとか思ったわけですが。
また、アムステルダムに住むと、シンガポールの凄さを実感しました。アムステルダムもスマートシティとして頑張っているのですが、レベルが違います。
次表は、IMDが発表したスマートシティ・インデックス(2019) でA以上の格付けを得た都市です。家族類型も書いてみました。
興味深いのは、サンフランシスコのような絶対核家族な都市が上位を独占すると思いきや、直系家族的な都市がトップ10の過半を占めていることです。ジュネーブも直系家族地域に近い平等核家族なので、その傾向は明らかです。
やはり、ITの導入は、単純にパソコンのわかる人が多いというだけでなく、政治主導のトップダウンで進めるところがあるのでしょう。
コペンハーゲンやオークランドは、国(デンマーク、ニュージーランド)が小さいので、国の生き残りをかけて、都市開発に注力しているところがあると思います。
共同体家族は、ヘルシンキだけですね。今後、中国の都市などがランクインしてくると思いますが、そもそも、住民へのサービスは、優先順位が低い印象があります。政府に対する不信感の裏返しでもありますが。
ヘルシンキは、フィンランドがロシアの脅威に常にさらされているため、国の存亡を賭けて、産業を育成しているところがあるのではないでしょうか。私も、ヘルシンキのMaaSを体験しましたが、バスからレンタカーまであまねく交通手段が利用でき圧巻でした。これは、共同体家族の1. 市長の権威を認められる、2. 住民に平等なサービスを求める という特徴にマッチした結果ではないでしょうか。同じ家族類型でも、火の付け方で真逆の結果になるのは興味深いところです。
スマートシティは、個人情報の扱いが問題になります。核家族な地域では、個人を尊びますので、住民からの訴訟にそなえて、行政がより多くのリソースを割くことになるでしょう。直系家族、共同体家族の地域は、あっさり、行政が個人情報を使ってしまうことでしょう。エストニア(共同体家族)が電子政府にあっさり移行できてしまった一因もこれかと。
一口に北欧といっても、フィンランドは共同体家族、スウェーデン、ノルウェーは直系家族。ややこしいことにデンマークに近い海側は、絶対核家族。なので、行政サービスも実は微妙に違うのではないかと予想しています。
では。