【本】国家の自縛 ☆☆☆☆

国家の自縛
国家の自縛
佐藤 優 産経新聞社 2005/9

 産経新聞元モスクワ支局長斎藤勉による佐藤優氏(起訴休職外務事務官)へのインタビュー。佐藤さんは、『獄中記』が出版されていますが、こちらを先に読みました。


 『国家の罠』では、田中外相と鈴木議員の対立、拘置所暮らしと検察庁のやりとりが中心に描かれています。本作では、国家の罠で浮かび上がってきたさまざなイッシューについて、本人による解説を聞くことができます。外交は、プロフェッショナルの世界なのだと思いますね。
 2007年、経済面での焦点は、三角合併解禁だと思いますが、外交では、北朝鮮問題でしょう。佐藤氏は、拉致問題の解決策として、「白旗戦術」をあげています。この問題については、両国トップによる解決しかなく、そのためには、トップ間の「電話」になる人物が必要なのだそうです。
 このオペレーションで中国に頼らない理由が興味深いです(P.42)。

拉致問題は国家主権と人権の複合した問題です。中国は国家主権の点についてはわかるが、人権の意味合いがわからないからです。

 一方、日本の外交にとって、『金日成著作集』が役立つとも述べています。北朝鮮がソ連からの送電網提供を断ったケースが紹介されています(P.142)。サハリン2の報道を読んでいても、こうした外交センスは、ビジネスをしていくうえでも非常に重要だと思います。
 靖国問題については、ロシアの考え方(P.66)が、面白いですね。たしかに、日本の教科書を見れば、ロシアについて厳しい書き方をしているのに、ロシアは文句を言ってきません。単純に日中、日韓と単純化せずに、複眼的に見れるのは、大きな力だと思いました。
 最後に、今後の活動について答えるくだりで、日本のインテリジェンス機関に触れています。 

その時インテリジェンスとしての伝統のあったのは英国なんですが、中野学校のような諜報学校ができたのは日本が世界めてなんですよ。英国にもなかった。だから日本人というのは実は情報のDNAはっとてもいいんです。

 2007年、日本人は、このDNAをちゃんと引き継いでいけるんでしょうか。

では。