財務諸表の読み方を教える時に、私が触れるのが、会社に一番大切な人的資産が計上されてないということでした。有価証券報告書だと人数が載るぐらいで、あとは、「人件費」というコストが損益計算書に載ります。
最近、人的資産も有報に記載する動きがあります。これまで見えていなかった人への投資を記載すると株価は上がるのでしょうか。下図は、国ごとの株価収益率(PER)と株価純資産倍率(PBV)を示したものです(バブルサイズは時価総額)。
PER = 時価総額 / 当期純利益
PBV = 時価総額 / 純資産
PERとPBVの相関も薄そうですが、こうしたマルチプルが低いところが上がるかというとどうでしょうか。
このチャートを見ていると、興味深いことも。まずは、アメリカへの期待の高さ。インドのマルチプルが高いのは、これから伸びる市場だからよくわかるのですが、先進国なのにそれと変わらないのは改めてすスゴいことかと。
アメリカの上場企業7300社の平均が、当期純利益の29倍、純資産の4.3倍の時価総額になっているということです。日本の上場3900社の平均が、14倍、1.1倍と比べたら、差は明らかです。
アメリカは、東インド会社の伝統を受け継いでいる気がしますよね。出資者を募って船団組んで、アジアからコショウとか買い付けてヨーロッパで高く売り、もうけを山分けするという。
日本の上場企業のPBVが1.1倍って、もうバリュエーション要らないのではないかと苦笑するレベルですね。貸借対照表に載っている簿価でM&Aしたら良いのではないかと。会社は株主に儲けさせるものではなく、社員が暮らすための手段、という思想が伝わってきそうです。
アイルランド(86社)とデンマーク(196社)のPBVが高いのも面白いですね。小国であるがゆえに限られた資本を成長産業に振り向けたのでしょうか。
しかし、サウジのPBVも3.66倍もあると、所詮エネルギーが強いのかなとも思いますね。
中国のマルチプルが低いのを見ると、高成長が終わったのを実感しますね。地政学的なリスクとは別だと思います。
香港のPBVは1を割ってますね。市場がどうみているのかがよくわかります。
ブレクジット後のイギリスのマルチプルが、ドイツと変わらないのも興味深いです。家族類型的にはアメリカと同じ絶対核家族なので、もっと高くても良さそうですが。インドの宗主国だったことを考えれば、もうちょっとインドに寄ってもいいのにと。
サムスンと韓流スターに惑わされてしまいそうですが、韓国のマルチプルも低いですね。サムスン以外は日本と変わらない問題を抱えているのかもしれません。
逆に台湾のPBVは高いですね。なんででしょう?
と一通り見てくると、日本のマルチプルが低いのは、まずは成長性の低さではないですかね。日本の小さい会社だと、純資産+営業利益✕3年=企業価値 で売買されているとか聞きますね。上場企業ですらPBV1.1倍なので、この低評価も仕方ないのかもしれません。
SDGs や ESG とかもいいですけど、なによりも、これから伸びるという期待が高まらないことには、始まらない気がしました。
では。