転職支援会社の方の話を聞きました。印象に残ったのは、
何でもこなせる器用な人よりも、「何屋さん」かがわかりやすい人の方が、(外資系)金融機関の転職が決まりやすい
ということでした。先日ご紹介した、トッドのフレームワークを使って、私なりに話をまとめてみると、下表のようになります。
つまり、英米系の金融機関の組織はモジュール化されているということですね。アメリカ、イギリスは、絶対核家族社会で、自由を重んじる。子供を早い段階で独立させるため、最初の就職先に親はこだわらない。
本人も自由を重んじるため、拘束を避けてmobilityを確保するようなキャリアを思い描く。つまり、何度か転職して、最終的に自分らしい生き方ができればと思っている。
そうした求職者を受け入れる側は、組織をモジュール化する。つまり、誰かが辞めたら、次の候補者で埋められるような職務区分にしておく。
自由を重んじる社会では、金融は直接金融が中心となり、証券会社の地位が相対的に高い。労働者も労働市場を通じて最適配分されると信じられ、利益を生む仕事に従事する労働者の給料は高くて当然と思われる。
一方、直系家族は、子供の教育に熱心なので、親が長年の投資を回収しようとして、最初の就職先選びにこだわる。権威主義的なので、職務よりも、会社の格を尊ぶ。会社は「擬似直系家族」として運営され、先輩から後輩に技術が引き継がれ、すり合わせの技術が進化していく。このため、BMW、ポルシェといった複雑で高い熟練度が要求される製品が育ちやすい。
金融制度は、間接金融中心。それは、あたかも、家父長が家族全体をみて、資金分配を決めるようでもある。
転職回数は少なく、さまざまな部門とすりあわせができるよう、他部門の知識を得るためにローテーションが組織に組み込まれる。
①直系家族圏の金融会社から②絶対核家族圏の金融会社への異動は、その逆よりも容易だったため、②が事業拡大する際の人材供給はまかなえた。
しかし、金融バブルがはじけ、②が急速に雇用を削減すると、②→①への異動は非常に困難となる。
雇用調整が長引くのは、そういう見方もできるかと思います。
では。