ファイナンスの世界史 大村敬一 2025
『金利の歴史』と並び、これまでの自分のキャリアを振り返りながら読める一冊でした。資本主義の本質がオランダ的な仕事のやり方に通じるという点は、以前も考察しましたが、本書でその歴史的背景が補完されました。
改めて若くして親元を離れて暮らす絶対核家族は、引っ越しが多く、その場限りの関係で仕事を進める必要がありました。家族の墓が村にあり、代々そこに住み続ける直系家族の仕事の仕方とは根本的に異なるのです。
世界初の株式会社はオランダの東インド会社でした。それまでのアジアへの航海が「プロジェクト・ファイナンス」で毎回清算していたのを、継続的な会社として複数の船を派遣するようになったのが株式会社だったわけです。
近代株式会社としてのかたちは、出資者(プリンシパル)と経営者(エージェント)の分離関係が確立されていたこと、すべての株主の有限責任制を導入したこと、譲渡可能な株式が発行されていたこと、などの点で、イギリス東インド会社に2年ほど遅れての設立ですが、オランダ東インド会社(1602年)の誕生の方が最初とされます。(p.87)
つまり、それまでは、航海が終わるごとに全部配当して、次のプロジェクトに向かっていたのを、利益の一部を残して次の航海に再投資したのが株式会社だったわけです。
この本を読んでから、最近の議論を読むと、家族類型の違う人達が、配当を議論していても、噛み合わないのがわかります。
野球とベースボールが微妙に違うように、株式会社とjoint-stock-company も違うのです。
同じ核家族でも、平等核家族なフランス、スペインには、有名な投資銀行がないのも興味深いところです。絶対核家族は、子どもへの遺産相続を平等にしません。格差を容認するのであり、末娘に100%とかもありえます。なので、信託銀行や法律事務所が発達し、運用についても、リスクをとるので、英米蘭などと相性が良かったのだと思います。
ちなみに、スイスがプライベート・バンキングで有名になり、何世代にもわたって、家族とつきあうというのは、これまた直系家族らしいと思うのでした。
