米ロ首脳会談をみて、世界は新たな秩序に向かっていると思いました。かつてのアメリカであれば、戦争中のロシア大統領を自国に招くことはなかったでしょう。歴史上、特定の超大国が世界秩序を主導する時代は「パックス」と称されてきましたが、これからの時代はどのような「パックス」となるのでしょうか。
歴史上の「パックス」時代
歴史を振り返ると、グローバルな秩序を形成し、安定をもたらした時代はしばしばその主導国の名から「パックス」と呼ばれてきました。私の記憶では、以下のような「パックス」が存在しました。
年代 | 名称 | 原動力 |
---|---|---|
BC27~AD180 | Pax Romana | 統治力 |
7世紀初~13世紀半ば | Pax Islamica | 中継貿易 |
13世紀~14世紀 | Pax Mongolica | 騎馬機動力 |
16世紀初~1648 | Pax Hispanica | 航海技術 |
1648~1815 | Pax Neerlandica | 民主化・商業力 |
1815~1945 | Pax Britannica | 産業革命 |
1945~現在 | Pax Americana | グローバル化 |
現在~ 2100 | Pax Anglophonica | AI・核融合? |
それぞれの「パックス」は、その時代の優位な特性を背景に繁栄しました。ローマ帝国はその卓越した統治システム(リーダー選出、軍隊統率、植民地支配)で地中海を制しました。イスラム世界は、東西の中継貿易で繁栄を築き、モンゴルは騎馬隊による広大な版図を確立。スペインは大航海時代をリードし、オランダは近代的商業国家のモデルを示しました。イギリスは産業革命を通じて世界経済を牽引し、アメリカは多様性を内包する巨大な国内市場をテコにグローバル経済を主導しました。
現在から2100年にかけて台頭するのは、「Pax Anglophonica」(英語圏)ではないでしょうか。
Pax Anglophonica:英語圏が主導する未来
ゴールドマン・サックスのGDP予測(2075年時点)によれば、上位10カ国のうち6カ国が英語圏です。

私の見立てでは、購買力平価(PPP)ベースでは中国がトップに立つかもしれませんが、通常のドルベースGDPでは引き続きアメリカが首位なのではないでしょうか。インドネシアは予測より過大評価されていると思います。
しかし、ナイジェリア、パキスタン、エジプトといった国々は、トップ10がありうると思っています。国連の人口予測をみても、パキスタンとナイジェリアはアメリカを超えます。

パキスタンは意外かもしれませんが、凡庸な国は核兵器を持ったり、インド空軍機を撃墜できたりしません。
一方、イギリスは国民保健サービス(NHS)の課題など国内に問題を抱えるものの、ブレグジット後、旧植民地との貿易やコモンウェルス圏との連携を強化することで、そのダメージを上回るメリットを享受するとみています。既にインド系の首相が誕生し、ナイジェリアにゆかりのある党首が存在する現状は、旧宗主国と旧植民地の関係性が単なる過去の遺産ではなく、新たなネットワークとして機能していることを示しています。
私は、大学進学時に父から英語を勉強しておけと言われました。今、私の子どもが大学に行く年齢になりましたが、同じことを言うと思います。英語圏の時代が到来するからです。
中国に気を取られてアジアの時代になると思いがちですが、経済の軸は「インド大西洋経済圏」にシフトするかもしれません。例えば、ナイジェリアに本社を置けば、英語を介してシリコンバレーの技術とバンガロールのIT人材にアクセスできますね。AI/ロボットがドライブする時代には、この2つの国をつなぐことが重要だと思います。

イギリスの「プラットフォーム」の価値も再評価されるでしょう。例えば、イギリスで医師免許を取得すればニュージーランドで働ける、ACCA(英国勅許公認会計士)の資格を持っていれば南アフリカで会計士として働けるといった、共通の基準や資格による国際的な流動性がさらに魅力的になります。
AIやロボットによる失業が顕在化する時代において、子どもたちが生き延びる力を高めるには、パックス・アングロフォニカに乗れる力が必要です「日英同盟」の復活は、軍事面だけでなく、日本の家庭も豊かにするかもしれません。木更津市は、大チャンスを逃しましたね。