日本企業が欧州企業を買収した後に、最初に取り組む仕事の一つがシステムの見直しです。日本の本社で使っているのと同じものと置き換えるのは、一部の大企業で、多くの中小企業は、システムはそのままという例が多いです。

 本社が勘定奉行を使っているとかであれば、ドイツ企業に矯正できないのはわかります。しかし、プログラミングはほぼ英語ですし、結局、日本企業もWindows とかWord/Excelを使っているので、世界共通のシステムを使うのに、アレルギーはないと思います。しかし、日本本社はSAPを入れたのに、欧州企業を買収した時に、SAPに統一しない的な話は、普通にあります。日本企業には、Genbaの意向を無視して、本社の仕様を強制するというのが得意でないところがあります。

 そんなこともあり、私は、クライアントに、「ちょいダサ」のシステムを進めてきました。本社も買収先も従業員のITレベルは低いのですから、最新のITサービスを導入するのはおすすめしてきませんでした。たとえば、顧客は他社が使っているクラウドサービスを使おうとするのですが、使い古されたマイクロソフト社のSQL Serverベースのソフトを推奨したりしてきました。

 しかし、マイクロソフト社が、オープンAI社に投資したことで、状況が変わってしまいました。ちょいダサのシステムの方が、ChatGPTのおかげで賢くなってしまうかもしれないのです。これまえでの経理システムや、POSデータがPower BI で統合され、ChatGPTに聞くように、会社のことについてなんでも答えられるとしたら。あるいは、在庫の変動に応じて自動発注してくれるようになったら。

 これまで、何億円とお金をかけて、AWS、SAP、ほかのクラウドサービスに乗り換えた企業は、まるで定価で買ったあとにバーゲンのお知らせを受け取ったような悔しさに見舞われるでしょう。もちろん、これらの企業も、AIについては、キャッチアップしてくるでしょう。しかし、ChatGPTのすごさは、「頭が良い」ことではなく、「人間のレベルに合わせた」ところなのです。

 まさに、ウォークマンと同じマイナスのマーケティングです。ウォークマンは、開発当初は再生専用機でした。当時世界最先端の製品を作ることに命を燃やしていたエンジニアは、録音機能を「引く」ことに全員反対しました。しかし、その後の大ヒットは、ほとんどの人には携帯用カセットプレーヤーに録音機能を求めていなかったことを示しています。

 これまで、海外現法のシステムを置き去りにしていた日本企業にとっては、ちょっとした追い風ではないでしょうか。