【本】地域産業振興の人材育成塾

地域産業振興の人材育成塾
地域産業振興の人材育成塾 新評論 2007/2

地方で人材育成あたられている一橋大学関満博教授の活躍ぶりが伝わる一冊。『現場主義の人材育成法』、『二代目経営塾』に続く第3弾。事業後継者育成が、地方で具体的にどのように行われているかがわかります。地域格差が話題になっていますが、こうした地方での地に足着いた活動には、励まされます。


 

これといった自然資源に恵まれていないわが国の場合、優れた「人材」を生み出し、活躍してもらうことが不可欠であることはいうまでもない。(P.1)

という一貫した視点があります。
 中小企業の後継者選びの難しさをP15で活写しています。中小企業といえども社会的な存在であり、適性のある人が敬称していくことが望ましいと考え、従業員の中から後継者を選ぶと、その奥さんが

「止めて下さい。貴方は何を考えているの。うちはサラリーマンでいいのよ。定年まで問題なく勤め上げ、それからは年金で静かに暮らしましょう。中小企業の社長になれば、この家も担保になるのでしょう。私は嫌です」

と反対するのだそうです。
 日本の経営者は、無限責任を要求され、よほどの覚悟が必要とされるのですね。
 ハっと思ったのは、「中小企業の社長は大企業の社長以上に責任が重い」P.17です。ソニーの出井会長の『迷いと決断』とはまた違った苦労があるんですね。なのに、その教育システムができていない。
 MBAコースは、中小企業の現実に対応しておらず、そもそも、中小企業経営者は、週に1日大学に通うことすら困難なわけです(P.18)。
 その具体的な回答が、ゼミ形式の勉強会というのが、面白いところです。本書では、伊予銀行、京都銀行、墨田区、高岡市などの事例が紹介されており、参考になります。しかも、関先生のネットワークによって、こうした勉強会が相互に交流を深めているんですね。
 その先生が、人材育成のポイントとして「世の中の先端を実感させること」(p.240)を挙げています。SONYの設立趣意書を思い出しました。人間のやる気に火をつけるのは、そういうことなんですね。

では(^^)/^

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