銀行の収益力について調べてみました。横軸に株主資本コスト(Cost of equity) 縦軸に自己資本利益率(ROE)を取りました。
ROEは通常、当期純利益÷資本(簿価)ですが、時価総額で割りました。
たとえば、シグネチャー銀行の場合、株主は12%以上の利益率を期待していました。しかし、実際の利益率は7%でした。株主の期待する利益率を超えられない銀行は、遅かれ早かれ淘汰されたでしょう。
たとえば、JPモルガン銀行の株主資本コストは9.4%。ROEは11.2%ですから、株主を満足させられます。
日本のメガバンクは、優秀のようにみえます。しかし、分解すると、さまざまなことが見えてきます。
まず、株主の資本コストが米銀に比べてだいぶ低いです。専門的な話(CAPM)になりますが、日本の無リスク利子率はわずか0.5%。米国よりも3%ポイントほど安くなっています。加えてベータが0.3 – 0.5しかありません。この3年、値動きが小さかったのですね。米銀が1を超えているのはちょっと驚きます。日本の投資家は銀行のことを電力債のような地味な投資対象のように見ているのに対し、米国の投資家は米銀のことをレバレッジを効かせて利益を追求するサービス業と見てるとでもいいましょうか。
同じ銀行といっても、ベースボールと野球ほど、違うように見えます。
もうひとつ、邦銀は時価総額(PBR)が低いので、ROEが高く出てしまっています。無リスク利子率が3%ポイント上がり、PBRが現在の0.5倍から1倍に改善されれば、その後、株主を満足させるのは苦労しそうなのがわかります。
中国の銀行の異質さもわかるチャートになっています。邦銀同様に株主資本コストは安く抑えられていて株価も安い。中国は貸出の伸びや利幅は、日本を上回ると思うので、不気味です。政府の規制が厳しいのか、それとも、不良債権を投資家が織り込んで見ているのか。
そこで、もう一度破綻した米銀3行の株主資本コストをみると、SVBとSignature Bankは、結構な高さになってましたね。株価の動きも荒く、投資家もリスクは覚悟していたはずです。潰れるとは思ってなかったでしょうけど。
日本と中国の金融危機対応は、どうなるでしょうか。
では。